お得に退職?!失業保険の賢いもらい方

終身雇用神話も崩壊し、昨今のコロナ禍の影響で解雇されたり会社が倒産して突然無職になったりと、明日は我が身に降りかかるかもしれない解雇や失業。心配されている人も多いかもしれませんが、解雇や失業した人を対象に行われる失業保険(失業手当)の中身を知っていると、賢く計画的に転職や再就職、独立の準備を行うことができちゃいます。

知っているか知らないかで大きく人生に差がつくので、概要を知っておくだけでも損はしません。今回は専門家が見るような詳しい数字などの中身ではなく、これくらいの概要を押さえておけば「まず自身が保険料を貰えるのかどうか」・「貰えるとしたらどのくらいの期間もらえるのか」・「どうやってもらうのか」・「その他合わせて知っておくと得する豆知識」の4点が理解できるように解説していきます。
※この記事では65歳以上の高年齢被保険者については取り扱っていません

失業手当の対象者は?

解雇されたり退職や失業したら誰でも失業手当が貰えるというわけではありません。まず大前提条件として「離職前の勤務先で雇用保険に入っていた」ことと「就職する意志があること」が必須になってきます。「就職する意志があること」に関しては、解雇されたり退職や失業後にハローワークに行って話をすればすぐに条件に当てはまるのですが、正規雇用ではなく友人や知人の手伝い、地元の小規模な事業者や商店街のお店のもとでのアルバイトでは「離職前の勤務先で雇用保険に入っていた」に該当しないことが多いので注意が必要です。

いわゆる雇用契約を結んだ上で事業主が雇用保険の届け出をしている場合は雇用保険に加入していることになりますが、そうでない場合は大前提条件の「離職前の勤務先で雇用保険に入っていた」を満たさないので、退職や失業したとしても失業手当はもらえません。

ですので、そもそも雇用されて働く場合、自分は雇用保険に加入されているのかを確かめておくことをオススメします(正規雇用の場合は自動的に加入してますし、保険料も徴収されています)。

そしてその大前提条件を満たした上で以下の様な場合分けが発生します。

失業手当の対象者の各条件
【一般離職者(自己都合により退職した人)】
離職の日以前2年間に、雇用保険の被保険者期間が通算して12カ月以上あること

【特定理由離職者(下記該当者)】
・有期労働契約の更新を希望したが、認められず離職した人
・出産や育児により離職し、受給期間の延長措置を受けた人
・父母の扶養や介護など、家庭事情の急変により離職した人
・配偶者や扶養親族と別居生活を続けることが困難になり離職した人
・特定の理由で通勤が困難になり離職した人
・企業の人員整理などで、希望退職者の募集に応じて離職した人

[失業手当給付の条件] 離職の日以前1年間に、被保険者期間が通算して6カ月以上あること

【特定受給資格者(企業の倒産や解雇によって離職を余儀なくされた人)】
離職の日以前1年間に、被保険者期間が通算して6カ月以上あること

退職や失業・解雇の経緯・理由によって給付条件が異なりますが、少なくとも6ヶ月以上は被保険者期間(雇用されて保険が適用されている期間)がなければどの様な理由であっても失業手当がもらえない点に注意しましょう。

失業手当はどの程度貰えるのか?

失業手当のもらえる金額や期間はかなり細かく設定されています。大きく分けると下記の5点の条件に応じて失業手当のもらえる金額や期間が変わります。

失業手当の金額や期間の決定条件
1.どの離職者(一般離職者・特定理由離職者・特定受給資格者)に該当するか
2.対象者の年齢
3.対象者の被保険者期間
4.対象者の基本手当日額
5.対象者の賃金日額

1~3の条件に応じて失業手当の給付日数が決まります。それぞれ90日,120日,150日,180日,210日,240日,270日,330日で設定されており、どの条件に当てはまるかは事前にハローワークに聞いておくと良いでしょう。

4~5の条件に応じて給付金額が決まります。基本手当日額とは失業手当の「1日の給付額」で賃金日額は対象者の「1日分の給料」のことを指しています。計算式は

基本手当日額の計算式
基本手当日額 = 賃金日額(退職前6カ月の賃金合計÷180) × 給付率(50~80%)

となっており、給付率は年齢や賃金日額によって変動します。こちらの計算によって算出された基本手当日額と給付日数で掛け算した金額が失業手当で貰える金額と思ってもらってOKです。しかし、この計算も少しややこしいので、事前にハローワークに聞くかシュミレーションサイトで概算を出しておくと良いでしょう。

少し複雑な条件と計算式ですが、要するに条件にさえ当てはまっていたら最低でも90日間の失業手当が貰えると思っておいて良いでしょう。

失業手当はどうやって貰うのか?

解雇されたり退職や失業した会社から「雇用保険被保険者離職票-1,2」をもらった上で「身分証明書」「証明写真」「印鑑」「振り込み希望の通帳」の合計5点をセットにして、住民票を置いている地区を管轄しているハローワークに行き、案内に沿って手続きを行えばOKです。

なお「雇用保険被保険者離職票-1,2」については通常、会社が郵送してくれますが、10日以上経っても届かない場合は、念の為会社に連絡を入れることをオススメします。

書類を全て揃えてハローワークに行った当日からすぐに失業手当を貰えるというわけではなく、説明会の参加や数回ハローワークに行った上で貰えるものになるので、いつから受給できるかは事前に窓口で確認するようにしましょう。

合わせて知っておくと得する豆知識

上記のような失業手当の基礎知識を踏まえた上で、知っておくと得をする情報を4点ご紹介します。全て覚えておく必要はないですが、知っているとよりお得に失業手当が貰える可能性もあるので、ぜひ合わせてチェックしておきましょう。

失業手当をもらっている間も仕事してOK

失業手当をもらっている期間はハローワークに行って職探しをしなければなりませんが、それとは別にアルバイト等の短期労働をすることは禁止されておりません。しかし、労働時間や収入額が多くなったり、週20時間以上の労働や31日以上の雇用が見込まれる等の雇用保険に加入するための条件に当てはまったりしてしまうと、失業手当が減額されたり支給が止まったりする可能性があります。

ただこれは、外部で働いて雇用された際に雇用主がハローワークに報告することによって発覚するものです。裏を返せば、家族のお手伝いによる報酬や身内からお小遣い等はハローワークに報告することもほとんど無いと思うので、その点を理解しながら行動すると賢く失業手当を貰うことが可能です(雇用されて収入が発生した場合は自らでもハローワークへの申告が必要とされています)。

失業手当が減額されたり支給が止まったりする条件を考慮して、再就職や独立の道を検討しながらアルバイトする方が失業手当を貰っているよりも有意義だと感じた場合は迷わず働きましょう。

自己都合よりも会社都合で退職する

失業手当の金額や期間の決定条件の中に「どの離職者(一般離職者・特定理由離職者・特定受給資格者)に該当するか」という項目がありましたが、ここの項目が「一般離職者(自己都合)」よりも特「定理由離職者や特定受給資格者(会社都合)」の方が、失業手当を貰える期間や金額が多くなり、被保険者期間期間も6カ月以上で済むので条件が緩和されます。

さらに、失業手当を貰えるタイミングも「一般離職者(自己都合)」より早いので、可能であれば「定理由離職者や特定受給資格者(会社都合)」で解雇されたり退職や失業した旨でハローワークに受理してもらえるようにしましょう。

早めに再就職したら祝い金が貰えることを知っておく

実は再就職してその証明をハローワークに持っていくと祝い金(再就職手当)を貰える場合があります。後述する条件に当てはまった上で自身で申請する必要があり、申請が受理されると約1ヶ月後に祝い金(再就職手当)が振り込まれます。

祝い金をもらうには下記の8の条件を全て満たしている必要があります。

再就職手当が貰える条件
1.就職日の前日までの失業の認定を受けた後の基本手当の支給残日数が、所定給付日数の3分の1以上あること
2.7日間の待期期間満了後の就職であること
3.1年を超えて勤務することが確実であると認められること
4.雇用保険の被保険者であること
5.再就職先が前職と関係ないこと
6.離職理由による給付制限を受けた場合は、待期満了後1カ月間については、ハローワークまたは許可・届け出のある職業紹介事業者の紹介により就職したものであること
7.過去3年以内に、再就職手当や常用就職支度手当の支給を受けていないこと
8.失業手当の受給資格決定前から内定していた再就職先でないこと

また、上記の条件に当てはまった上で更に下記条件によって再就職手当金額が変わってきます。

再就職手当の計算式
【失業手当の支給残日数が3分の2以上の場合】
再就職手当 = 基本手当日額 × 所定給付日数の残日数 × 70%

【失業手当の支給残日数が3分の1以上の場合】
再就職手当 = 基本手当日額 × 所定給付日数の残日数 × 60%

できるだけ早めに再就職するとより多くの再就職手当金が貰えるイメージです。失業手当を貰い続けるか早めに再就職して再就職手当を貰うか、自身の状況を踏まえてお得な方を選ぶようにしましょう。

失業中は健康保険や年金の手続きもすぐに行う

雇用されている間は給料から自動的に保険料や年金が差し引かれて気にしていなかった人も多いかもしれませんが、解雇されたり退職や失業した後も基本的には健康保険や年金・住民税等の支払いが発生します。

健康保険に関しては短期間だけ継続して同じ保険に入ることができたり、国民健康保険に切り替えたり、配偶者が居る場合はその扶養家族(被扶養者)になる、といった選択肢が出てきます。雇用されていた期間や条件によってどの保険に切り替えるのが得なのかは変わってくるので、住民票を置いている市区町村の役所窓口で聞いてみるのが良いでしょう。

年金や住民税に関しては失業中は申請すると支払いが免除されたり猶予される場合があるので、こちらも住民票を置いている市区町村の役所窓口で聞いてみるのが良いでしょう。

さいごに

今回は失業中の賢い保険(失業手当)の貰い方について解説しました。日本では解雇されたり退職や失業することをマイナスに捉えて怖がる人も多いですが、その分の保証もしっかり整っています。

雇用されており保険料を支払っていることが前提になりますが、今まで払ってきたお金が一部戻ってくると思って、貰えるものは賢く貰っておき、転職や独立等の次の自身のキャリアアップを目指していきましょう。

総まとめ
①最低でも6か月または12ヶ月は雇用されて被保険者でなければ失業手当は貰えない
②失業手当にも種類があり、会社都合で申請できる方がお得
③失業手当を貰うにはハローワークへの申請が必要
④失業手当を貰っていても働いて給料を貰うことは可能(ハローワークへの報告義務は発生)
⑤早めに再就職したら祝い金が貰える
⑥市区町村で手続きをすれば保険料や年金の支払猶予・免除されることがある